→紀伊國屋ウェブストアで購入 →紀伊國屋ウェブストアで購入 「写真の聖地へ」 昨夏、サン・ルゥに行ってきた。パリから南東へ350キロ、ブルゴーニュ地方にあるこの小さな村の名を記憶したのは、森山大道の『サン・ルゥへの手紙』という写真集によってだった。そこには村の写真は入っていなかったが、太陽がたくさん当たっていそうな地名の響きが耳に残った。 それ以来、機会があれば行ってみたいものだと思っていたが、昨夏パリに友人を訪ねたおりに晴れてその地を踏むことができた。なんということのない村で、日差しだけが強烈で、村の道には文字どおり人っ子ひとり見えず、案内所で時間になるまでお待ちくださいと言われて、木陰の椅子に座り、ガイドが現れるのを待った。『実験室からの眺め』を繰っていると、その日の他愛のない時間の流れが記憶の前面にせり出してくる。 「1827 年7月、世界に記念すべき一枚の写真は撮影された。 中部フ