ブックマーク / honzaru.hatenablog.com (7)

  • 『殉教者』加賀乙彦/信仰にはパワーが必要 - 書に耽る猿たち

    『殉教者』加賀乙彦 講談社文庫 2020.12.23読了 自らの信仰のために命を失ったとされる人のことを殉教者という。キリスト教で使われることが多いが、信仰の対象は決まっていないようだ。タイトルを見るとどうしても遠藤周作さんを思い浮かべる。著者の加賀さんは遠藤周作さんに影響されてキリスト教の洗礼を受けた。 豊臣秀吉の時代、キリシタン迫害があったことは知っている。フランシスコ・ザビエルや千々石ミゲル(読み方が難しいから、社会の授業でも印象的な人は多いはず)の名前は覚えている。しかし、日におけるキリスト教弾圧、そして布教については詳しく理解していなかった。 実在の人物でこの小説の主人公、巡礼者ペトロ岐部キスイのことももちろん知らなかった。日人で初めて聖都エルサレムを訪れ、ローマで教皇となり、日に戻り布教に務める。マルコポーロよろしく長い距離を旅したことで有名なようだ。布教活動をする人に対

    『殉教者』加賀乙彦/信仰にはパワーが必要 - 書に耽る猿たち
    ElderlyMom
    ElderlyMom 2020/12/24
    もう91歳にもなられたのですね。Merryクリスマス!
  • 『女の家』日影丈吉/女中のための家 - 書に耽る猿たち

    『女の家』日影丈吉 中公文庫 2020.11.3読了 日影丈吉さんという小説家のことは、名前も作品も知らなかった。1991年に既に亡くなられた方であるが、泉鏡花文学賞を始めいくつかの文学賞を受賞したようだ。 銀座のとある家で折竹幸枝(おりたけゆきえ)がガス中毒死した。老刑事小柴と女中の1人乃婦(のぶ)が、交互に独白をするような構成である。これは純文学なのか、ミステリなのか。自殺か他殺かをめぐり小柴は推理し、乃婦は淡々と過去を語るが、これは純文学だと私は思う。 ある社長の2号という立場である幸枝の家には、女中3人、子供1人、子供の家庭教師1人の6人が、社長の保護を受け暮らしていた。「どうしてこの人数で女中が3人も?」と意味不明だ。だって半分が女中なのだ。 人手を要するような人は誰もいないのに、なんとなく手のかかるのは、つまり私達がいるためで、いってみれば、この家の生活の大半は、私達に働かせる

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  • 『パチンコ』ミン・ジン・リー/誰もが産まれる国を選べない - 書に耽る猿たち

    『パチンコ』上下 ミン・ジン・リー 池田真紀子/訳 ★★ 文藝春秋 2020.10.30読了 まるでペルシャ絨毯を思わせるような装幀、色使いは花札のようだ。書店で見かけた時に表紙に一目惚れしたのだが、よく見ると全米図書賞最終候補、オバマ前大統領推薦とある。そして在日コリアン4代にわたる年代記なんて、好み過ぎる! どうしてタイトルが「パチンコ」なんだろうと不思議に思いながら読み始める。と、タイトルを忘れてしまいそうなほど、なかなかパチンコは出てこない。上巻には確か一回だけさりげなくパチンコという単語が出てきただけ。タイトルの意味がわかるのは、後半から。 これが、めちゃめちゃおもしろい作品だった。最初の数頁では、子ある男性に騙されてしまった少女のよくあるストーリーかなと思っていたのだが、いつしか物語に引き込まれて没頭してしまい素晴らしい読書時間を堪能できた。 ジャケットや宣伝文句に期待に胸膨

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  • 『風立ちぬ・美しい村・麦藁帽子』堀辰雄/風が立ったら前を向こう - 書に耽る猿たち

    『風立ちぬ・美しい村・麦藁帽子』堀辰雄 角川文庫 2020.9.14読了 実はまだこの作品は未読であった。誰もが知る有名な作品だからこそ、かえって読む機会が遠のくというのは実はよくあるのではないだろうか?先日福永武彦さんの『草の花』を読んでから堀辰雄さんの作品を早く読みたいと思っていた。 honzaru.hatenablog.com この作品は文庫だけでも多くの出版社から刊行されている。短編なので他の作品もいくつか一緒に収められており、それが出版社によって異なる。日語(訳されていない)の作品だし特にどの文庫でも良いと考えていたのだが、訪れた書店にはこの角川文庫のしかなかった。これも縁だと思い購入したのだが、どうだろう、表紙の美しいイラストが気に入った。目を凝らすと木蔭の奥にはキャンバスが見える。 表題3作以外にも短めの短編と詩が収められている。表題の3作は、なんと全て関連したものだ

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    ElderlyMom
    ElderlyMom 2020/09/15
    同感です。私も松田聖子さんの歌を思い出します。この作品を若いころに読んでサナトリウムに憧れていましたね。
  • 『かの子撩乱』瀬戸内寂聴/溢れ出る生命力 - 書に耽る猿たち

    『新装版 かの子撩乱』瀬戸内寂聴 講談社文庫 2020.8.29読了 先日井上荒野さんの『あちらにいる鬼』を読んで、瀬戸内寂聴さんの小説を読みたいと思っていた。当は代表作『夏の終わり』を先に読もうとしていたのだが、屋でパラパラ見ていたら講談社文庫から刊行されているいくつかの新装版が目に留まる。寂聴さんの小説といえば自らの恋愛を題材にした私小説のイメージだったが、作品のような伝記小説もあるようだ。 honzaru.hatenablog.com 波乱万丈な岡かの子さんの生涯。かの子さんは、日を代表する芸術家・岡太郎さんの母親である。大阪万博の「太陽の塔」で有名な岡太郎さんの名前は知っていても、彼の両親のことを知る人は少ないだろう。私もほとんど知らなかった。芸術家を産み出した両親も、やはり同じく芸術に生きる人物であった。父親の岡一平さんは漫画家、かの子さんは歌人であり小説家である

    『かの子撩乱』瀬戸内寂聴/溢れ出る生命力 - 書に耽る猿たち
    ElderlyMom
    ElderlyMom 2020/08/30
    男性で瀬戸内寂聴さんや、瀬戸内晴美時代の「夏の終わり」を読みたいとおっしゃるのは珍しい気がしたのですが、偏見でしょうか(-_-;)
  • 『草の花』福永武彦/孤独な生きもの - 書に耽る猿たち

    『草の花』福永武彦 ★ 新潮文庫 2020.8.17読了 なんのだったか忘れてしまったが、この福永武彦さんの『草の花』が出てきて、ずっと気になっていた。恥ずかしながら、福永武彦さんのことは今まで知らずにいたのだけれど、戦後の日文学に大きな影響を与えた方で、なんと池澤夏樹さんのお父様だというから驚きだ。 東京郊外のあるサナトリウムで療養中の私(作品の語り手)が、さも自殺であるかのように術中死を遂げた友人汐見茂思(しおみしげし)について、約1年間の思い出と彼の残したノートを元に語る。 決意はそれが尚も揺れ、ためらい、少しずつ凝固して遂に決意として定着されてしまうまでは、意識の全域にわたって重くるしく主人公を苦しめているが、一度決意が完了してしまえば、かえって意識の中から身軽に逃げ出してしまうことがある。(128頁) こんな文章を書ける人はそうそういない。「決意」という言葉が擬人化され、まる

    『草の花』福永武彦/孤独な生きもの - 書に耽る猿たち
    ElderlyMom
    ElderlyMom 2020/08/18
    私が読んだ頃と装丁が変わっていますね。
  • 『フラニーとズーイ』サリンジャー/家族の慰め方 - 書に耽る猿たち

    『フラニーとズーイ』D.J.サリンジャー 村上春樹/訳 新潮文庫 2020.8.12読了 この作品、まだ未読だった。サリンジャー作品は『ライ麦畑でつかまえて』しか読んだことがない。タイトルと中身のギャップがこんなにもある作品は『ライ麦〜』の右に出るものはないんじゃないかなと思う。だから、村上春樹さんが訳した『キャッチャー・イン・ザ・ライ』のほうがまだ中身に近い(近いというか英語のままなのでまだましというか)ようで、邦題をつけるのも難しいんだなぁと思った記憶がある。 個人的には結構面白く読めた。ストーリーがどうというよりも、読み心地が良いという感じ。なんてことはないある家族(グラス家)の日常を切り取ったものが書かれているのだが、つまるところ家族への優しさが描かれている。 タイトルを見て勝手にフラニーとズーイは恋人同士なのかと思っていたけれど、グラス家7人兄妹のうち下の2人のことで、フラニーは

    『フラニーとズーイ』サリンジャー/家族の慰め方 - 書に耽る猿たち
    ElderlyMom
    ElderlyMom 2020/08/13
    村上春樹さんの場合、禁じ手使用はマイナスにならないので…。人生で最初に読んだ本は『秘密の花園』で、45年どころではありませんが、いつか読み直してみたいと思っています。
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