「ブラック企業」は人種差別だという意見がネットをにぎわせている。昨年流行語大賞トップ10を受賞するなど、私はこの言葉の普及に深くかかわった経緯がある。こうした意見について、経過や事実関係を踏まえて、私なりの見解を述べたいと思う。 そもそも「ブラック企業」とは?「ブラック企業」という言葉は、もともとネット上のスラング(悪口)であり、2000年代後半に、ネットユーザーが会社の劣悪な労働条件を非難するために使い始めた言葉である 。しかし、当時は定義が判然とせず、なぜこの言葉が世の中に広がったのか、誰にも理解されていなかった。 私は2006年からNPO法人POSSEを運営し、これまで数千件の若者からの労働相談に関わってきた。その経験から、この「ブラック企業」という言葉の背景には、「正社員雇用」の劣化があると直感的に理解した。当時、新卒正社員から「長時間労働で鬱病になった」とか「パワーハラスメントで