大学時代。私の恋人は、坊主頭で、体育会系の野球部員だった。部員といってもずっと補欠で、レギュラーになったことは一度もなかった。代役だか何かで一度だけ公式戦のベンチに入ったことはあったが、その時も試合には出なかった。野球は好きだったが、野球には好かれていなかった。大学四年の六月、彼は起業し、大学と野球部をやめた。ひどい土砂降りの夕方、私は彼に新しい会社に連れて行ってもらった。そこは、古びたマンションだった。部屋の隅に積み重ねられたコンピュータを背に、彼はいつもと違う表情をしていた。「俺、野球部だから坊主だったけど、ずっと長髪にしたかったんだよね」閉め切った窓には激しく雨が当たり、雷鳴が響き始めた。「おまえの髪も肩まであるじゃん……だからさ、俺の髪が……」と、ここまで言ったところで彼は黙ってしまった。思い詰めたような、それでいてどことなくいたずらっぽい表情を見て、ああ私はやっぱりこの人が好きな

