飼育用に輸入された外国産カブトムシが野外で殖えて生態系を乱している、というような話がよく話題になる。それでふと思ったのだけど、本が虫でなくてよかった。 本が生き物だったら、たぶん困る。 男子中学生なんかが『罪と罰(上)』を買ってきて途中で挫折して、そのまま本棚に立てておくか古本屋に持っていったりすればいいけど、ゴミと一緒にてきとうに捨てちゃったりしたら、いけません。ふとしたはずみにゴミ袋から道端へとこぼれ落ちた『罪と罰(上)』は、そのまま野良になります。野良『罪と罰(上)』です。 同じように捨てられた『罪と罰(上)』はいっぱいいるだろうから、いつの間にか野良『罪と罰(上)』が集まって群れをつくったりする。深夜、明かりの消えた本屋さんの裏の路地などに、おびただしい数の野良『罪と罰(上)』が、音もなくわだかまっていたりするのだ。怖い。 生き物であるから、当然、繁殖もする。駆除しない限り