開戦責任は重いのに…なぜ? このところずっと岸信介にまつわる謎を追いかけている。岸はなぜ、A級戦犯として起訴されなかったのだろうか。 東条英機内閣を倒して戦争終結に貢献したからだ、と言いたいところだが、岸の調書類を読むかぎりではちがうらしい。 前回(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49842)ふれたように、岸の第1回尋問(1946年3月7日)を担当したG・サカナリ中尉らは、倒閣の顛末を聴いたうえでなお「岸は被告席を飾るにふさわしい」と報告している。 つまり東条内閣の閣僚としての開戦責任はそれほど重いということだ。真珠湾奇襲への米国民の恨みは深い。ついでに述べておくと、サカナリ中尉らによる岸の人物評価も甘くない。 中尉らは「岸はおそらく(一貫した原理原則のない)機会主義者で、自分に都合のいいようにものごとを利用する人物だ」と調書のなかで指摘している。