大橋ジム会長の大橋秀行はいまや、井上尚弥をはじめ5人の世界王者を輩出した名伯楽として名を知られている。だが、現役時代の大橋は幾度となく強者との激闘を繰り広げ、1980年代中盤から90年代前半まで日本ボクシング界を牽引した名チャンピオンだった。軽量級離れした強打を武器に「150年に1人の天才」と呼ばれた男は、どんなボクシング人生を歩んできたのか。「ボクサー・大橋秀行」の知られざる足跡に、ロングインタビューで迫った。(全4回の1回目/#2、#3、#4へ)※文中敬称略 「尚弥と違って、俺は何度も木っ端みじんにされた」 相手の背中から巻き込むような左ボディが脇腹をえぐる。王者を2度転がしてテンカウントを聞かせた。1990年2月7日、東京・後楽園ホール。新チャンピオンとなった大橋秀行は緑のベルトを腰に巻き、超満員の観客から沸き起こった「バンザイ」コールを体全体で浴びた。 WBA世界ミニマム級王者の崔