ものごとが20年も続くと、人は、それが伝統的な文化だと勘違いするようになる。日本型雇用システムは、高度成長期の20年間にできあがったもので、戦前は、日本の労働者の流動性の激しさが嘆かれたものだった。「日本型」という名前がついていると、日本文化の所産のように思う人もいたりするが、誤解だ。労働経済学者には常識の話ではある。 日本型雇用システムの年功賃金は、成長する経済では有利なものである。成長するなら、人的資源をできるだけ留めようとするのは合理的な行動で、高度成長期の経営者が恩情にあふれていたわけではない。逆に、現在のように成長しない経済では、非正規のようなスポット買いで調節することが必要になる。 結局、本当に問題を解決しようとするなら、成長させるしかない。成長しないことを前提に、雇用システムを変え、社会保障をスリム化することを考えがちだが、前提を受け入れなければいけないということもあるまい。