世の中にはちょっと困りものだけど何故か憎めないという、愛すべきやつがいる。 仲間どおしで集まると、必ずと言っていいほどその人の話題が出るというか酒の肴になるタイプである。人気者なのだ。苦笑混じりに、困るよなぁあいつ、というようなことは口にするのだが、それが陰口や悪口にならないから不思議だ。 周囲に迷惑をかけても嫌われないというのは、一種の特技かもしれない。 駆け出しのころからのつきあいになるが、とても“話の長い”人がいる。私より2つ3つ年上の先輩ライターなのだが、私の周りでは半ば伝説と化した逸話の持ち主になっている。この人の話はとにかく長い。おまけに、くどいのである。 いまも酒の席で出るエピソードをいくつか――。 友人が帰宅したとき、留守番電話のメッセージランプが満杯になっていた。まだ携帯電話が普及する前のことですが、メッセージが一杯になることなど珍しいので、首を捻りながら再生ボタンを押す