若い人たちが東京に憧れなくなったのだという。東京に求心力がなくなり、若者は「ジモト」を志向している。いい傾向だとおもう反面、そんな話を聞くと、わたしは自分だけがやけに歳を取ってしまったような気がしてならないのである。わたしは、みっともないくらい東京に憧れていた。 東京へいきたい。高校生のわたしは、それだけを生きるよすがにしていた。かっこいい東京。いや、わたしの東京への憧憬は、「憧れていた」などと過去形で語れるようなしろものではない。わたしはいまだに、東京に憧れているのだ。東京に住んで十九年。もうそろそろ飽きてもいいころだが、わたしの憧れは続いている。 たとえば、上京して十七年目のこと。わたしはついに、かねてからの希望であった、都内のとあるおしゃれタウンに越すことができた。たくさんの若者が集うことで知られる、音楽とファッションと文化の街。わたしはついに、おしゃれタウンの住人となったのだ。この