政府が検討を始めた新しい労働時間制度は、「残業代ゼロ」と批判された第1次安倍政権の「ホワイトカラー・エグゼンプション(WE)」より対象を広げ、企業には使いやすい内容だ。だが、働き手にとって大事な「働き過ぎ」に歯止めをかける有効な対策はどこにも見当たらない。 もともと、日本の労働時間の規制は弱い。労働基準法は1日あたりの労働時間を8時間と定める。ただ、労働組合などと合意すれば、8時間を超えて働かせてもいい。条件をつければ、過労死の認定ライン(月平均80時間)を超えて残業させても違法にならず、事実上は青天井だ。 その代わりに残業や休日、深夜に働かせた場合、企業に割増賃金を支払うよう義務づけた。企業に負担させることで、長時間労働を抑える仕組みだ。 産業競争力会議で示された提案は、労働時間の長さではなく、成果により賃金を決めることで、その抑えを取っ払おうというものだ。ただ、その場合は「働き過ぎ」「