人口が減る地方の交通網をどう維持するのか。平成の時代に政府が進めた規制緩和は、社会全体で地方の赤字路線を支える仕組みを否定する方向に働いた。事業者や自治体任せでは、高齢者や学生ら交通弱者はもう守れない。求められるのは、地域の知恵だ。 大型連休が明けたばかりの5月7日未明。就寝中だった山下修・島根県江津市長は市職員の電話でたたき起こされた。「大変です。国道261号が土砂崩れで通行止めです」 市街と山間地を結ぶ幹線道路にはわずか1カ月前に廃線になったJR三江線の代替バスが走る。迂回(うかい)する細い道を走れる小型バスなどを急きょ借り、翌日から緊急輸送に切り替えた。通行止め解除までの10日間に市が支払った費用は約130万円。山下市長は天を仰いだ。「三江線が残っていてくれれば……」 同市と広島県三次市の108…