試合内容は圧倒的に福見が押していた。地元中国の呉と計8分間を戦った女子48キロ級の決勝は旗判定。有効な手数を重ねた福見の勝利は動かないとみえた。だが、まさかの1−2。地元の声援が逆風になったとはいえ、「自分の中では勝っていると思った」。 福見の柔道に、はじけるような若さはなかった。9月の世界選手権をはじめ、主要な国際舞台への参戦は今年6度目。寝技主体の地味で粘着質で負けない柔道への傾斜は、世界ランク1位を維持する上でやむを得ない流れかもしれない。 昨年8月の世界選手権を制して以降、“世界”の荒い鼻息を背中に感じ、「勝ち続けるという意識はない。一つ一つの試合をこなすという意識」で畳に上がり続けた。女子48キロ級で「経験」という無形の財産は、谷亮子が20年近く独り占めしてきた。その谷が10月に引退。より多くの財産を分け与えられ、場数を踏んだ福見は「勝ち続けることの難しさを改めて感じている」。