ブックマーク / note.com/idea_jam_you46 (45)

  • 鳳凰落とし #5|松田悠士郎

    札束をいくつかジャケットの内ポケットに押し込むと、嶋野は煙草に火を点けながら部屋を出た。渋谷駅行きのバスが用賀中町通りを進むのを横目に等々力駅に入って大井町線に乗り、自由が丘駅で東横線に乗り換えて渋谷へ出た。そこからセンター街を抜けて、雑居ビルの中のインターネットカフェに入った。以前に偽名で作った会員証を見せ、シャワーの使用を申請した。幸い、すぐに使える状況だったのでその場でシャワーセットを追加購入し、個室のカードキーとシャワーセットを持って指定された番号の部屋に入り、ジャケットを脱いで先にシャワーを浴びに行った。 シャワーを終えた嶋野は、個室に戻って据え付けのデスクトップパソコンを立ち上げ、検索エンジンに『大鳥炎珠』と打ち込んで検索をかけた。結果、大鳥が宗師を務める『鳳凰教』のホームページや、宗教関係の解説サイト等がヒットしたものの、大鳥個人の過去に言及したサイト等は見つからなかった。嶋

    鳳凰落とし #5|松田悠士郎
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2023/01/29
    宗教関係って、なかなか面倒。あと、今回登場したガンショップ、昔実在した店舗がモデル。
  • 鳳凰落とし #4|松田悠士郎

    自宅に戻った嶋野は、コインロッカーから回収した包みを無造作に開けて、畳の上に広げた。中身は、輪ゴムで纏められた一千万円分の札束だった。適当に枚数を確認すると、嶋野は札束を全て押入れのキャリーバッグへ放り込んだ。その場でしゃがみ込み、下段の奥から飲みかけのウォッカの壜を取り出してひと口呷り、畳へ座り込んでまた飲んだ。すると、ジャケットの中でスマートフォンが震えた。ろくに相手も確認せずに電話に出た嶋野の耳に、菅原の声が飛び込んだ。 『遅くにすみません、菅原ッス』 嶋野は壜に栓をして煙草を咥えながら答えた。 「何だ」 『あの、今回のクライアントが何か失礼しました』 嶋野は軽く舌打ちして煙草に火を点け、大量の主流煙と共に返した。 「ルールは徹底させろ」 『はい! 申し訳無いッス、それで、五百用意するって言ってるんスけど』 菅原の言葉に、嶋野は軽く頷いてから告げた。 「バーテンに預けろと言え。で、お

    鳳凰落とし #4|松田悠士郎
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2023/01/22
    遊戯シリーズ定番のトレーニングシーンをやってみた。
  • 鳳凰落とし #3|松田悠士郎|note

    土橋がテーブルの上に並べたのは、法衣を身に着けて頭巾を被り、顔を薄手の布で隠した人物のモノクロ写真だった。並べ終えた土橋が言った。 「大鳥炎珠。宗教団体『鳳凰教』の宗師を名乗る男です」 大鳥の名前こそ知らなかったが、『鳳凰教』には聞き覚えがあった。かつて『不死の羽』と称した、鳳凰の羽根を象った極彩色の装飾品を高額で売りつけたり、『不死への道』というセミナーを開催して信者を募り、入信した人々を修業の為として山奥の合宿所に長期間閉じ込める等の社会問題を引き起こし、嶋野も前職時代に何度か関係案件に関わった事がある。最近も教団の名前を聞いた気がするが、すぐには思い出せなかった。 嶋野は大鳥の写真から視線を土橋に戻して尋ねた。 「準備金は」 「お受け頂けますか、それでは」 頬を緩めた土橋がアタッシュケースから取り出したのは、金額の欄に何も書かれていない小切手だった。 「こちらに任意の金額を――」 土

    鳳凰落とし #3|松田悠士郎|note
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2023/01/15
    ここまで硬質な書き方はして来なかったから難しい。
  • 鳳凰落とし #2|松田悠士郎|note

    菅原は鳩の様に首を動かしながら煙草を吸うと、口の端から主流煙を漏らしつつ言った。 「今回はどうも、お堅い筋らしくて」 「場所は」 嶋野が先を促す。 「あ、いつもの所に夜の十時ッス。最初向こうがリモートでとか訳判んねえ事ヌカシやがったらしいんすけど」 菅原の悪態を無視して煙草をビール缶で消すと、嶋野は玄関へ顎をしゃくった。菅原は肩をすくめて煙草をもうひと吸いしてから缶に押し込み、踵を返しかけて「あ、そうだ」と口走ってズボンのポケットから何かを取り出した。一瞬身構えた嶋野の前に差し出されたのは、電源の入っていないスマートフォンだった。 「これ、新しいスマホッス」 嶋野は無言で受け取ると、電源を入れずにズボンのポケットにしまった。正規のルートではなく、架空名義で入手した海外仕様のSIMを、SIMフリーの端末に搭載した所謂「飛ばし」のスマートフォンである。 「じゃ、失礼します」 水飲み鳥の如く何度

    鳳凰落とし #2|松田悠士郎|note
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2023/01/08
    週刊状態じゃんかよ。
  • 鳳凰落とし #1|松田悠士郎|note

    十字に仕切られた視界に、若い女が映る。左の目尻にある、大きめの泣きぼくろが目を惹く。 その女の胸に、風穴が開く。 穴から、目を刺す程赤い鮮血が飛ぶ。 女の顔が、苦悶に歪む。 全てが、スローモーションで進む。 目を、離せない。 衣服を朱に染めながら前のめりに倒れて行く女の目が、こちらを見返す。 女の、鮮血と同じくらい赤い唇が、ゆっくりと動く。 ひ・と・ご・ろ・し 「!」 嶋野龍平は、額に大量の汗を迸らせながら身を起こした。 鼻から荒い息を吐き出しつつ、周囲を見回す。 装飾の無い、殺風景な壁と、片隅に鎮座するテレビが目に入り、そのすぐ脇には小型冷蔵庫が見える。 窓には薄桃色のカーテンがかかり、外は未だ暗い様子だった。 自分自身は全裸でベッドに長座していて、足元にブランケットがくしゃくしゃになって置かれていた。 右側に、やはり全裸の若い女が、嶋野に背を向けて寝息を立てている。ふたりの間に、使用済

    鳳凰落とし #1|松田悠士郎|note
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2023/01/01
    元日に唐突にスタート。