ブックマーク / note.com/idea_jam_you46 (45)

  • 「その男、ジョーカー」EPISODE1「卒業」#17|松田悠士郎

    翌日、ワタシは昼ちゅうしょくの為ために『喫茶 カメリア』へ入り、奥のカウンター席に陣取じんどった。ランチタイムだからか、店内はそこそこ賑にぎわっていて大悟も忙いそがしく動き回っていた。 「お待たせしましたジョーさん、いらっしゃいませ」 申し訳無さそうな顔で水の入ったグラスを差し出した大悟を手招てまねきして、ワタシは小声で言った。 「結婚式、ここでやろう。五日後」 「え!? ここでですか? い、五日?」 大悟が素すっ頓狂とんきょうな声を上げたので、他ほかの客の視線が一斉いっせいにこちらに浴びせられた。ワタシは周囲に愛想笑あいそわらいを振ふり撒まいてから、大悟の頭を軽く叩たたいた。 「変な声出すなよオマエ! こっちが恥ずかしいだろ!」 「いや、だってジョーさんが急に驚おどろかす様な事言うから」 そりゃご尤もっとも。それはともかく、ワタシは大悟の後頭部を掴つかんで引き寄せ、更さらに話を続けた。

    「その男、ジョーカー」EPISODE1「卒業」#17|松田悠士郎
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2024/07/14
    実際に結婚指輪が質種になっているかは知らない。
  • 「その男、ジョーカー」EPISODE1「卒業」#16|松田悠士郎

    夜半を過ぎた頃、ワタシはMOMOちゃんを連れて『HONEY FLASH』の前にバンデン・プラを乗り付けた。周辺には酔客すいきゃくが多く往来おうらいしていて、後部座席のMOMOちゃんは若干じゃっかん怯おびえている様だ。 「遅おせぇなアカネの奴、寝てんじゃねぇだろうな?」 独ひとりごちたワタシは煙草たばこに手を伸ばしかけて止めた。どうせ後ろからアイドルの純真無垢じゅんしんむくな手が伸びて来て阻止そしされるから。 ハンドルに掛かけた右手を小刻みに動かしながら待っていると、不意にワタシの右からノック音がした。見ると、すっかり出来上がったアカネとマリアが肩を組んでこちらを覗のぞき込んでいる。ワタシはMOMOちゃんに後部座席側のドアロックを外す様に指示してから、窓を開けずにふたりを後ろへ促うながした。早い所乗せてしまわないと近所迷惑きんじょめいわくだ。 「イェ〜イ探偵っさぁ〜んお疲つかれぇ〜い」 「わ

    「その男、ジョーカー」EPISODE1「卒業」#16|松田悠士郎
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2024/07/07
    神父はカトリック、牧師はプロテスタントです、確か。
  • 「その男、ジョーカー」EPISODE1「卒業」#14|松田悠士郎

    「は?」 「はい?」 ワタシと大悟が同時に間抜け面づらでリアクションすると、MOMOちゃんはやおら立ち上がって大悟の手を取り、頬ほほをほんのり赤く染そめて言った。 「好きです」 「は?」 「はい?」 またしてもワタシと大悟が同時に、数秒前と全く同じリアクションをした。MOMOちゃんは取った大悟の手を自らの胸に引き寄せると、凛りんとした声で告げた。 「結婚してください!」 その瞬間、『喫茶 カメリア』の中だけ、時間が止まった。THE WORLD。 漸ようやく動き始めたワタシの脳内に、MOMOちゃんの発言がリフレインした。 結婚してください 結婚してください 結婚―― 「結婚んんんんん!?」 大悟の叫びが、ワタシを現実に引き戻した。時は動き出す。 大悟はその強面こわもて全体をマグマ並みに赤く染め、今にも飛び出さんばかりに両目を見開いて、己の手を固く握ってうっとりと見上げる小柄な女性を見下ろした

    「その男、ジョーカー」EPISODE1「卒業」#14|松田悠士郎
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2024/06/23
    イカレちまったぜ(判る人だけ判ってください)!
  • 「その男、ジョーカー」EPISODE1「卒業」#13|松田悠士郎

    ワタシはゴネる森崎を宥なだめすかし、身支度みじたくを整ととのえて部屋から出て来たMOMOちゃんを伴ともなって玄関へ向かった。聞き込みに行ったアパレルショップで購入したのであろう、やはりピンク一色のジャケットとスカートという出で立ちだが、さすがにもう目が慣れた。ストーカーが電話なりメールなりを寄越よこして来る可能性を踏ふまえて、携帯電話はワタシが預かる事にした。 「ねぇお願いしますよ探偵さぁ〜ん」 尚なおも追いすがる森崎の懇願こんがんを背にを履はいたワタシは、振り返りざまにそれまで履いていたスリッパを拾い上げて差し出しながら告げた。 「オタクの協力が必要な時は連絡するから、今日の所は大人しくしてろ。いいな」 またしても青菜に塩状態の森崎を置いて、ワタシとMOMOちゃんは森崎の部屋を後にした。外はすっかり暗くなっていた。腕時計を見ると、午後五時を過ぎている。 「これからどうするの〜?」 可愛

    「その男、ジョーカー」EPISODE1「卒業」#13|松田悠士郎
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2024/06/16
    あ〜の〜日あ〜の〜時ぃ〜あ〜の〜ばぁしょぉ〜で(後略)
  • 「その男、ジョーカー」EPISODE1「卒業」#12|松田悠士郎

    「そぉ〜なの、もぉ〜困っちゃってぇ〜、って、何で知ってるのおじさん?」 おじさんって、まぁ、その辺の若いオネエチャンからしたらワタシも立派なおじさんなんだろうけど、それよりもこの鈍にぶさは何だ? ワタシが探偵だってさっき身分証見せたよな? これが噂うわさの天然って奴か? ワタシは半なかば呆あきれながらも身を乗り出してMOMOちゃんに説明を始めた。 「あのねぇ、ワタシはキミのジャーマネさんから頼まれてキミを探してたの、それで、キミの事を聞き込んでる最中にストーカーの事を聞いて、ついでにキミの事務所の前でこの人とお知り合いになった訳わけ。判る?」 「ふぅ〜ん、そぉなんだ〜」 MOMOちゃんは大仰おおぎょうに頷くと、おちょぼ口で麦茶を啜すすった。当に判ってんのか不安だったが、ワタシは話を続けた。 「でね、このキミの大ファンのお兄ちゃんが、キミがここに居るって教えてくれたからオジサンはここに来た

    「その男、ジョーカー」EPISODE1「卒業」#12|松田悠士郎
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2024/06/09
    ジョーは束縛されたくないので携帯は持ちません、今後も。多分。
  • 「その男、ジョーカー」EPISODE1「卒業」#11|松田悠士郎

    「え〜、勘弁してくださいよ〜」 ワタシは眉毛を八の字にして懇願こんがんするピンク男を振り払って後部座席を出ると、駐車料金を精算してバンデン・プラをコインパーキングから出した。 「ホラ、案内して」 ワタシが片手で煙草を出しながらバックミラー越しに指示すると、森崎は溜息を吐いて身を乗り出し、蚊かの鳴く様な声で道案内を始めた。 三十分近く走って辿たどり着いたのは、高級住宅街として知られる地域だった。 「オタク、こんな良い所住んでんの?」 ワタシが横目で森崎を見て訊くと、森崎は気色悪い笑顔で答えた。 「え、いや〜それ程でも〜」 ワタシは苛立いらだちを覚えつつ、不動産屋ってのはそんなに稼かせげるもんなのか? と疑問ぎもんに思った。まさかコイツ、地上げとかやってねぇだろうな? そうこうする内に到着したのは、さほど新しくもなさそうな五階建てのマンションだった。建物の横には駐車場が広がっているものの、区画

    「その男、ジョーカー」EPISODE1「卒業」#11|松田悠士郎
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2024/06/02
    二十年以上前のマンション事情ってどんなんだったんだろうか?
  • 「その男、ジョーカー」EPISODE1「卒業」#10|松田悠士郎

    「ストーカーって、MOMOちゃんのか?」 ワタシが口から主流煙をはみ出させながら訊くと、森崎は自信満々な顔で深く頷いた。 「はい!」 思わぬ所からストーカー被害ひがいの証言が飛び出した訳だが、その情報の出所が気になったワタシは更に質問した。 「オタクそれ、誰から聞いた?」 「勿論もちろん! MOMOちゃん人からです」 またも自信満々に返されて、ワタシは困惑こんわくを隠せなかった。 「人からって、何処どこで?」 「え? ああ、バイト先です、MOMOちゃんの」 何と、好きなアイドルのアルバイト先まで御存知とは、筋金すじがね入りにも程がある。ワタシは心の中で感心しつつ、コーヒーを飲んでから質問を続けた。 「あ、そう。そんで、MOMOちゃんのストーカーを捕まえるのと、あの事務所張り込むのとどう言う関係があるんだ? そんなド派手な格好であんな所に突っ立ってたら、下手すりゃオマエがばん、じゃなくて

    「その男、ジョーカー」EPISODE1「卒業」#10|松田悠士郎
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2024/05/26
    ミルクレープは結構好き。
  • 「その男、ジョーカー」EPISODE1「卒業」#9|松田悠士郎

    すると、それまで怯おびえた様子だった男の目が急に血走り、眉尻が吊り上がったかと思うと、ワタシに噛かみつかんばかりの勢いで声を荒らげた。 「違う! 僕は断じてストーカーじゃなぁい!」 「バ、バカ、落ち着け」 またも生唾を吐きかけられながら、ワタシは男の口に掌を当てて塞ふさいだ。この状況で警察でも呼ばれようもんなら、ワタシがあらぬ疑いをかけられる。だが男は何やら喚わめき続け、身体も激しく動かして拘束から逃れようとした。仕方無く、ワタシは男の腹に突きつけていた缶コーヒーをポケットから取り出し、男の目の前に晒さらして言った。 「まぁまぁ、これ飲んで落ち着きなよ」 「へっ?」 缶コーヒーを見せられた男は理解が追いつかないのか、抵抗を止めて不思議そうに缶を凝視ぎょうしした。ワタシはその間に男の口から手を外し、缶コーヒーを手渡してからトイレットペーパーをちぎり取って唾液だえきまみれの掌を拭った。 漸よう

    「その男、ジョーカー」EPISODE1「卒業」#9|松田悠士郎
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2024/05/19
    私はカフェオレには砂糖は入れません。
  • 「その男、ジョーカー」EPISODE1「卒業」#7|松田悠士郎

    モールを出たワタシは即座そくざに煙草を取り出して火を点つけ、たっぷりと煙を吸い込みながらピンクに侵おかされた両目をしばたたかせた。あそこまで行くと害でしかない。 紫煙しえんを撒まき散らしつつバンデン・プラを停めたパーキングメーターまで戻り、料金を支払って運転席に潜り込んだ。煙草を揉もみ消してひと息吐き、コンビニ袋から缶コーヒーを引っ張り出してステイオンタブを起こした。今の今まで買ったのを忘れていた。恐るべしピンク。 バンデン・プラを出したワタシは、コピーしたMOMOちゃんの顔写真を仲間達に配って回ると、ムサいオッサンから貰もらった名刺を頼りに『鈴井プロダクション』へ車首を向けた。ストーカーの件についてどのくらい把握はあくしてるのか、藤村だけでなく社長にも聞く必要がある。 ドーム球場を横目に、ワタシは大通り沿ぞいのコインパーキングにバンデン・プラを入れ、徒歩とほで『鈴井プロダクション』へ向か

    「その男、ジョーカー」EPISODE1「卒業」#7|松田悠士郎
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2024/05/05
    今回も含めて煙草を吸うシーンが多いけど、まだ健康増進法施行前って設定なので。
  • 「その男、ジョーカー」EPISODE1「卒業」#6|松田悠士郎

    同僚どうりょうのウェイトレスによれば、MOMOちゃんはここ一ヶ月程の間、いたずら電話やつきまとい等の被害ひがいに遭あっているとこぼしていたらしい。一度事務所に相談するとも言っていた様だが、あのジャーマネからはそんな事はひと言も聞いていない。相談してないのか、はたまた面倒を嫌ったのか、そもそも相談してないのか? 考えを巡めぐらせながら、ワタシは美味くないコーヒーを飲んで更に質問した。 「ここに来てた客で、桃子ちゃんを贔屓ひいきにしてた人とか居た?」 「そりゃ居ましたよ、でもお客様の事いちいち詮索せんさくしちゃマズいでしょ」 彼女の答に頷いたワタシは、礼を述べてからコーヒーを飲み干し、勘定かんじょうを頼んだ。 ワタシは、妙な敗北感はいぼくかんと共に『Cafe Peaberry』を後にした。クソ、生意気にテーブルチャージ料取りやがって。よくメニューを見なかったワタシのミスだが。 コインパーキング

    「その男、ジョーカー」EPISODE1「卒業」#6|松田悠士郎
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2024/04/28
    実際にはそこまでピンクな店は無い、筈。
  • 「その男、ジョーカー」EPISODE1「卒業」#5|松田悠士郎

    ワタシはまず、MOMOちゃんがアルバイトをしていると言うカフェへ向かった。藤村から送られたファックスによれば、淡谷の中心街から少し離れた場所に在るらしい。ワタシは取り敢えず、コインパーキングにバンデン・プラを停め、記載された住所を頼りにカフェを探した。 目当てのカフェ『Cafe Peaberry』は、有名百貨店から徒歩とほ数分の所に在あった。外装は薄いピンク色で統一されていたので、ワタシは少々場違いな感じを覚えつつ木製の扉を引いた。すると、扉の内側に取り付けられたパイプ式のドアチャイムがワタシの頭上で優雅ゆうがな音を奏でた。その直後、店の奥から耳障みみざわりな高温ボイスが飛んで来た。 「いらっしゃいませ〜」 ほんの少しだけ顔を顰しかめながら、ワタシは目だけを動かして店内を観察した。 出入口のすぐ左側にレジが置かれているが、周辺の調度品ちょうどひんは妙にファンシーな物で固められている。中の壁

    「その男、ジョーカー」EPISODE1「卒業」#5|松田悠士郎
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2024/04/21
    今回出て来るカフェは、今定着しているメイドカフェでは有りません。為念。
  • 「その男、ジョーカー」EPISODE 1『卒業』#1|松田悠士郎

    ワタシは今、崖がけっぷちに立たされている。 目の前には、裏側をこちらに向けた二枚のトランプカードが掲げられ、その奥には狡猾こうかつそうな笑みを浮かべながら、やや下瞼まぶたの上がった目でワタシを見つめる若い女の顔がある。そこから視覚を下へパンすれば、ラメが散りばめられたドレスに包まれた、目の覚める様な巨乳がテーブルに鎮座ちんざしている。その胸の前には五十枚のトランプカードが山と積まれていた。五十足す二で五十二。トランプの枚数としては一応合ってはいる。だが、この場にはもう一枚カードが存在する。それこそ、今ワタシの左手の中にあるハートのエースだ。 『ババ抜き』 そう、今ワタシはこのトランプを使った極めて古典的なゲームに興きょうじているのだ。いや、興じている等と言う状況ではない。ワタシは今、ワタシ自身の歴史的快挙を成し遂げられるか否かの瀬戸際に立っているのだ。何故なら―― 「ねぇ〜早くしてよ〜もう

    「その男、ジョーカー」EPISODE 1『卒業』#1|松田悠士郎
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2024/03/24
    今日から始まりました。
  • 一人称小説の教科書|松田悠士郎

    どうも、松田悠士郎です。 前回表明した「一人称を用いた探偵小説」を書く2当たっての問題が、私自身の読書経験不足です。 前回も書きましたが、私は今までに一人称を用いた小説を読んだ経験が圧倒的に少ないので、通常(?)の三人称を用いた小説に比べて書き方を把握できていないのです。 なので、一人称小説を学ぶ為に、一編の小説を読む事にしました。そのタイトルは、 Amazon Kindle版表紙 『アーバン・ヘラクレス』 です。 こちらは、私の旧友(年は私の方が下)にして個人的に師事している久保田弥代先生(現在作家活動休止中)が、かつての朝日ソノラマが主催した新人賞に入賞し、当時のソノラマ文庫から発行されたハードボイルドSF小説です。当然、書式は一人称を採用しています。 ソノラマ文庫版発売時に購入して読んでいましたが、現在は諸事情(察して)により手元に無いので、今回改めて電子書籍版(Amazon Kin

    一人称小説の教科書|松田悠士郎
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    IDEA_JAM_U46 2023/10/08
    果たして何人がソノラマ文庫に反応する事やら。
  • 次回小説企画決定|松田悠士郎

    どうも、松田悠士郎です。 前回書きましたが、このnote上に披露する次の小説についての主題が決定したので、発表致します。それは、 『一人称小説』 です。 小説を書く様になってそこそこ年月が経つ私ですが、過去に新人賞等に応募した作品も、ウェブに上梓した小説も含めて一人称を用いたのはたった一度、それも初めて書いた長編(いや中編か?)で、更に主人公(つまり一人称の対象人物)の台詞を一切書かずに通した、かなりトリッキーな内容の作品のみでして、まともな一人称小説は一度たりとて書いた事がありません。 振り返ってみれば、一人称小説を読んだ経験もそれ程多くありません。 ただ、一人称小説と言えば出て来る主題が「ハードボイルド」か「探偵」になるのは皆様も納得されると思います。なので次回の企画では、 「『一人称』を用いた探偵もの」 を書く所存です。 まだ完全に頭の中で構築できていないし、先に色々書くのも野暮なの

    次回小説企画決定|松田悠士郎
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    IDEA_JAM_U46 2023/10/01
    一人称って、最近どうなの(情弱かよ)?
  • 鳳凰落とし あとがき|松田悠士郎

    どうも、松田悠士郎です。 先週上梓した第30回をもって、私の初めてのハードボイルド小説「鳳凰落とし」が終了しました。一度でも読んで頂いた方々、誠にありがとうございます。 今回は「あとがき」と称して、この作品への思い等を書き連ねる所存です。と言っても「著者自身による作品解説」みたいな野暮な真似はしないので御安心ください。 このnoteの第一回の記事に書いた通り、この作品は今まで書いた事が無い「ゴリゴリのハードボイルド」を表現した訳ですが、それまでの小説で多用した台詞での遊びやちょっとしたギャグ等を徹底的に排して、ひたすら鋭く、硬く書く事を意識して書いていましたが、この遊びが無い文章を書く事が如何にしんどいかを思い知りました。 この作品は、第一回に書いた通り『処刑遊戯』(松田優作さん主演映画)を大いに意識して書いていましたが、実は執筆に入る前に、一映画をDVD で観ました。それこそ、 『サ

    鳳凰落とし あとがき|松田悠士郎
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    IDEA_JAM_U46 2023/09/24
    あとがきって、こんなんで良い?
  • 鳳凰落とし #30|松田悠士郎

    調布駅で下車した嶋野は、ファストフード店に入りつつ、時間を確認した。午前十一時を少し過ぎていた。店内を見回すと、カウンター前も客席もそれ程混雑してはいなかった。 テリヤキバーガーセットをオーダーした嶋野は、壁に貼られた『全席禁煙』の表示を睨みつけながら今後を思案した。その内に店員から呼びかけられたので、嶋野はテリヤキバーガーセットを受け取って客席へ移動し、店全体が見渡せる奥の二人掛けの席に陣取った。セットで付けたホットコーヒーの蓋を開けてひと口啜ると、おもむろにテリヤキバーガーを取ってラップを捲り、口に運んだ。 事を終えて店を出た嶋野は、煙草を咥えながら早月のマンションへ足を向けた。一旦正面を通ってから裏へ回り、早月の部屋を見上げた。洗濯物が干されているのが見えたが、早月が中に居るかは判断がつかなかった。嶋野は顔を伏せて煙草に火を点けると、その場を離れて調布駅の方へ戻った。その途中で見つ

    鳳凰落とし #30|松田悠士郎
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    IDEA_JAM_U46 2023/09/17
    色々細かいオマージュを詰め込んだが、野暮なのでいちいち解説しません。
  • 鳳凰落とし #29|松田悠士郎

    嶋野は顔を覆っていた不織布マスクをむしり取ってジャケットのポケットへ突っ込むと、煙草を咥えて火を点けた。 「そう言えば、あの土橋ってオッサン、放っといていいんですか?」 ハンドルを握りながら質問する菅原に、嶋野は主流煙を撒き散らしつつ答えた。 「下手にサツに喋ったら自分の身も危ないって事くらい判るだろ」 「ま〜それ以前に契約違反なんで俺等でシメますけどね〜」 半ばおどけた調子で話す菅原を尻目に、嶋野は腰からガバメントを取り出すと銃把の中からマガジンを抜き、残っていた六発の弾丸を全て出して再び銃把に納めた。弾丸をスラックスのポケットに入れると、ガバメントを菅原へ突き出した。 「ダッシュボードに入れろ」 「ウッス」 頷いた菅原が、前を向いたまま左手でガバメントを受け取り、ダッシュボードにしまった。 煙草を吸い終えた嶋野は、スマートフォンを取り出して電話をかけ始めた。相手は高松だった。 『もしも

    鳳凰落とし #29|松田悠士郎
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    IDEA_JAM_U46 2023/09/10
    スクラップ工場って、何か殺伐としたイメージ。昔「西部警察」等でアクションシーン撮ってた所為か?
  • 鳳凰落とし #28|松田悠士郎

    数日後、嶋野は通勤時間帯の満員電車に乗り込んでいた。先日、『鳳凰教』部から脱出した後に手に入れた真新しいジャケットを着て、その下には百円ショップで調達したワイシャツとネクタイを着けていた。下半身も、前職時代に購入して以来余り履いていなかったスラックスで固めている。頭にはソフト帽を被り、顔を不織布マスクで覆っていた。 『東急大井町線をご利用頂きまして、ありがとうございます。次は、二子玉川、二子玉川です。お出口は左側です』 車内アナウンスが聞こえると、すし詰め状態の乗客達が一斉に蠢いた。嶋野も合わせて身体を出口に向ける。 耳障りな金属音を立てて列車が停まり、一拍置いて降車側の扉が開いた。途端に、狭い車内に凝縮されていた乗客達が一気にホームへ吐き出された。その波に逆らわずに、嶋野もホームへ降りて改札口へと歩を進めた。行列が出来ているエスカレーターを横目に、中央の階段を早足で降りると、徐々に外の

    鳳凰落とし #28|松田悠士郎
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2023/09/03
    しかし、AIイラスト生成アプリが作る画像ってのは何処か変だよな。
  • 鳳凰落とし #27|松田悠士郎

    嶋野は目の前に突きつけられた銃口に対して眉ひとつ動かさず、組んでいた右脚を素早く跳ね上げて土橋の右手首を蹴りつけた。 「ぎゃっ」 痰が絡んだ様な悲鳴を上げて、土橋が拳銃を取り落とした。嶋野は上げた右脚の踵で開放されていたアタッシュケースを閉めると、ソファから腰を上げて拳銃を拾った。撃鉄が起こされていない事を確認して鼻を鳴らすと、右手を押さえて苦悶の表情を浮かべる土橋のこめかみに銃口を押し当てた。途端に土橋が息を飲む。 「ひぃっ」 「素人が扱うな」 低い声で警告するなり、嶋野は銃の撃鉄を起こした。シリンダーの回る音に、土橋の顔が引きつった。 「はぁっ、た、た、助けて」 唇を震わせて命乞いをする土橋を冷ややかに見つめると、嶋野は銃口を土橋に向けたまま対面のソファに戻って告げた。 「行け。帰ったら先生に伝えろ、しくじりましたってな」 土橋は顔の三分の一程を占める程大きく目を見開いて嶋野を見返しな

    鳳凰落とし #27|松田悠士郎
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2023/08/27
    磯川って名字、判る人はニヤッとしてください。
  • 鳳凰落とし #26|松田悠士郎

    サイレンサーによって抑制された銃声は、辛うじて嶋野の耳にのみ入って来た。 ガバメントの銃口からサイレンサーの中を通って射出された四十五口径の弾丸は、やや前方に突き出されていた大鳥の後頭部に打ち込まれ、突き抜けずに頭の中で留まった。衝撃で大鳥の顎が大きく開いたかと思うと、ゆっくり前へ傾いだ。 嶋野は大鳥の絶命を見届けると、ガバメントを素早く腹に納めながら何事も無かったかの様に元来た動線を戻り、騒ぐ子供をやり過ごして出入口をくぐった。その背中に、早月の悲鳴が追い縋った。 階段を駆け降りた嶋野はトイレに急行した。中で入院患者らしき初老の男性が小用を足していたので、軽く会釈しながら個室に入り込み、男性が用を足し終えるのを待った。かなり長い事排尿の音が響いて、嶋野は若干の苛立ちを覚えた。やがて音が止み、男性が手を洗ってトイレを出た。嶋野は素早く個室から出て周辺を見回し、付近に人影が無い事を確認してか

    鳳凰落とし #26|松田悠士郎
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2023/08/20
    銃を扱い慣れてない素人って、大体こうなるよね。