「HRの時間を利用して小説を読むことになった。いったい何がいいだろう?」 中学生になったばかりの息子が言った。しかしそんなことを聞かれても、小説など小学生の頃に「巌窟王」だの「十五少年漂流記」を読んだことがあるだけである。(それも児童向けの、だ)それ以来、かれこれ40年近く読んではいない。 ひとまずネットで調べてみる。 「中学生 おすすめ 小説」検索。 そこで出てきた小説が、この「あと少し、もう少し(瀬尾まいこ著)」だった。 本の表紙を眺める。中学駅伝を題材にした青春小説。勝利をつかむまであと少し、もう少しと奮闘する話と容易に想像がついた。そのタイトルは平凡に思え、とりあえず息子には勧めてみたものの、特に気にとめるモノでもなかった。 購入から1年程過ぎたある日、息子の机をふと見た時、それは目に入った。 それは、どこかで見た、しかしボロボロになった小説だった。あちこち折れ曲がり、カバーは所々