以下に公開するのは、ロシアによるウクライナ侵攻開始の約2年半前に『ゲンロンβ』に掲載された、小泉悠さんによるキーウ、サンクトペテルブルグ訪問記です。小泉さんは著書『「帝国」ロシアの地政学』(東京堂出版)刊行後に当地を訪れ、国境を越えて広がる(とロシアは考える)「ロシア的なるもの」を目にします。そうしたロシアと旧ソ連諸国との関係から見えてくる、古くて新しい「地政学」。「ロシアとは一体どこまでなのか」という問いかけは、ウクライナ侵攻を経た現在にあっても、なおアクチュアルではないでしょうか。 また、本文ではウクライナの首都「キエフ」がロシア語をもとにした表記ですが、初出時の呼称を尊重しそのままとしています。(編集部) ロシアとはどこまでか 外国を訪れるという場合、そこには一種のエキゾチックさが想起されよう。 違う肌の色、違う景色、違う言語、といったものだ。日本と同じアジアの国でさえ、空港を出れば