ロンドン五輪でメダルが期待される体操の田中理恵選手。兄の和仁・弟の佑典とともにオリンピック出場を果たし、“田中3兄弟”としても注目が集まっている。だがオリンピックまでの道のりは苦難に満ちていた。作家の山藤章一郎氏がリポートする。 * * * 田中理恵はいかにオリンピック選手となったか。父・田中章二氏(63)の、まずカネの苦労。 「強くなるとどんどんお金がかかります。理恵と、兄、弟も各地の試合に出る。それに、妻と私が同行する。選手の宿は指定されてます。ひとり1万円の宿泊費で、1週間滞在すると7万。掛ける5人で35万円。私の月給分です。 これに、交通費、食費。年間、どのくらいかかるか怖くて計算できません。とにかく、ボーナスは全部遠征費用に消えました。体操の選手をこしらえる、しかもオリンピック選手に育てるのは容易ではありません。私は延べ500人に教えましたが、オリンピック選手は3人です」 27歳