ロシア兵による暴行・強姦・拷問・大量殺人が明るみに出て世界中に知られることになったキーウ(キエフ)近郊のブチャの町(5月6日撮影、写真:ロイター/アフロ) 筆者はロシア軍には軍刑法も軍法会議もないのかと憤りを禁じ得ない。 戦場という極限状態において部下の規律を維持することは、任務達成はもとより戦争犯罪防止の観点からも指揮官の重要な役割である。 このため、世界の軍隊には軍刑法と軍法会議を中核とした軍司法制度が整備されている。 旧日本陸軍刑法には「掠奪および強姦の罪」が規定されていた。 それは、「戦地または帝国軍の占領地において住民の財物を掠奪したる者は一年以上の有期懲役に処す。前項の罪を犯すにあたり婦女を強姦したるときは無期または七年以上の懲役に処する(第86条)」というものであった。 ポッダム宣言により帝国陸海軍が解体されるとともに、「軍」に特有の軍司法制度もまた国家の枠組みから姿を消し、