「頼清徳さんの勝利を祝って、カンパーイ!!」 私の目の前に、一斉にビールジョッキが差し出された。一瞬逡巡して周囲を見回したが、店内に他の客はあまりおらず、近くにいる台湾人は私の連れのO君だけだ。ここはやむを得ない。私は表情筋を笑みの形に変え、ジョッキを掲げておくことにした。 台湾総統選が実施された1月13日夜、台北市内の話である。私は日本人の知人から夕食に誘われ、取材現場を離れて約束の店にやってきた。すると、現場には主に保守系の日本人15人ほどが集まり、民進党陣営の勝利を祝っていたのだ。 1月11日、台北の総統府前で開かれた頼清徳陣営の造勢活動(選挙集会) ©安田峰俊 著名なジャーナリストや尊敬する同業者の方もおられた場なので、この宴会自体の是非は論評しない。ただ、海外の選挙の開票当日にわざわざ現地に渡航して、志を同じくする日本人同士で集まり(私の友人のO君を除いて現地人は誰もいない)、現