23 ポルノグラフィに対する 言語行為論アプローチ1) 国内のジェンダー論・セクシュアリティ論 に大きな影響を持つジュディス・バトラーの 2) 『触発する言葉』 (バトラー, 2004) は、英国 の哲学者J. L. オースティンの言語行為論を積 江 口 聡* 極的に援用あるいは「脱構築」し、憎悪表現、 ポルノグラフィなどの社会的・法的問題を 扱っている。しかしこのバトラーの解釈はさ まざまな問題がある3) 。 ここでは、バトラーの曖昧で難解な4)議論 を追うことはできない。しかしバトラーの議 論全体は、レイ・ラングトンの論文(Langton, 1993)のオースティン解釈に多くを負ってお り5) 、またラングトンの議論は哲学的にも実 践的にも興味深いものであって、この議論の 魅力とその弱点は正確に理解される必要があ ると思われる6) 。そのための作業として、本 論では「言