『フィルカル』Vol.1, No.2に掲載された、稲岡大志さんという方の書かれた「堀江由衣をめぐる試論」を読みましたが、「声優の音声は、作品世界のキャラクターの音声を音声によって描写する媒体であり、かつ、作品世界のキャラクターによって発せられた音声でもあるという特徴を持ち、声優とは前者の特徴をアニメーションの鑑賞者に意識させないことを可能にする専門的技能を持つ者」(112頁)という氏の主張に、声優認識としての違和感を覚えます。 声優の声を、「作品世界のキャラクターの音声を音声によって描写する媒体」と「作品世界のキャラクターによって発せられた音声」という二層に分解して理解しようとする方法は、声優が声優として声を発すること、すなわち声優が作品世界という不可触の何かを芝居で表現しているという認識を欠落させているように思います。 「言語はあくまでも世界を描写する手段」(114頁)とか、「音声言語と