吉永嘉明『自殺されちゃった僕』 解説──掟破り、ということ 春日武彦 自分にとって大切な人が、しかも妻を含めて、次々にこの世を去って行ったとしたら、これはかなりのダメージを心に受けることだろう。おまけにその死が若過ぎ、自殺であったとなると。 そんな事態になったら、おそらく自分が何か不吉なものや禍々しいものを発散しているかのように感じるのではないだろうか。死の縁をわざわざ歩きたがるような人を、向こう側へ突き落としてしまうような邪(よこしま)な要素を自分が備えていると感じるのではないだろうか。あるいは、自分が不幸を招き寄せる体質なのではないか、と。普通、こんな目に遭う人物なんて、滅多にいないのだから。 実は不幸の理由をわたしは知っている。本文を読み進めるうちに、すぐに思い当たった。簡単な話である。著者(以下、Yと略す)がこんな運命に陥ることになったのは、わたしのせいなのである。わたしはYと一面