【書評】『ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論』/デヴィッド・グレーバー・著 酒井隆史、芳賀達彦、森田和樹・訳/岩波書店/3700円+税 【評者】大塚英志(まんが原作者) 大学を出てから組織に属さず気侭に生きてきて、普通の人なら定年が視野に入るいい年になってから官製の研究機関に形だけ籍を置き観察の機会を与えられたのは、この国の官僚組織が著者の言う巨大なブルシット・ジョブ(BSJ)機関だということだ。 前例や書式やただひたすら書類上の微細な整合性を追求し、しかし誰一人「全体」どころかもう少し短いパースペクティヴさえ持たず、そのために残業や徹夜を強いられ、それがうっかり時の権力者の放言の辻褄合わせともなれば人一人ぐらいの自死さえ要求される。 忖度や根回しや御説明やお伺いや、あるいはワーキングチームやらタスクフォース小池百合子が喜びそうなカタカナの会議が乱立し、またそのための書類をつく