おそらく、我が国の裁判の歴史の中で、“入れ墨(刺青)”がここまで脚光を浴びたことはなかったんじゃないか*1、と思うような判決が、東京地裁の知財部によって出された。 彫り師である原告の「作品」の著作物性が最大の争点となったこの事件。 多くの読者には無縁の世界かもしれない、この奥深き芸術の世界をちょっと覗いてみることにしたい。 東京地判平成23年7月29日(H21(ワ)第31755号)*2 原告:X 被告:株式会社本の泉社、Y 本件は、被告Yが執筆し、被告本の泉社が発行、販売した書籍の表紙カバーや扉において、原告が被告Yの左大腿部に施した「十一面観音立像の入れ墨」が掲載されたことをもって、被告Yらが原告の著作者人格権を侵害した、といえるかどうかが問題となった事件である。 被告Yは、現在、行政書士としてホームページを開設するなどして活躍されている方、ということだが、そこに至るまでの間には様々な紆