そう、つよい憎しみは口いっぱいに広がる。人を真剣に憎んだとき、自分の感情のあまりにも強烈さに慄くことだろう。キングショーは追い詰められながら「人を憎む」という自身感情に苛まれる。どうすることもできない、逃げ出す以外は。 ぼくのことをほんとは全然わかってない、だれもわかってくれてない。なにを思い、感じているか、まったくわかってくれてない。フーパーの嘘八百も訴えも全部鵜呑みにしてしまう。話にならないようなとてつもないこんな嘘を、だれだって見抜けるはずだ。ところがどうだ、見抜くどころか、ぼくのことをまるでわかっていないから、でたらめだろうがなんだろうが信じてしまう…… キングショーは誰からも遠く隔たり、自分が殻に閉じこもるのを感じる。母でさえ分かってもらえない。母でさえ遠い存在となる。 これは子どもに宿る悪意、邪の力と残忍性の童話なんだ。さいなむ者とさいなまれる者の物語。登場人物のだれひとりとし