この姫君ののたまふこと、「人々の、花、蝶やとめづるこそ、はかなくあやしけれ。人は、まことあり、本地たづねたるこそ、心ばへをかしけれ」とて、よろづの虫の、恐ろしげなるを取り集めて、「これが、成らむさまを見む」とて、さまざまなる籠箱どもに入れさせたまふ。 中にも「烏毛虫の、心深きさましたるこそ心にくけれ」とて、明け暮れは、耳はさみをして、手のうらにそへふせて、まぼりたまふ。 この姫君のいうことは変わっており、「世間の人は花よ蝶よと綺麗なものばかりありがたがるけれど、そうじゃないと思うのよね。人間は、誠実に、物事の本質を追求してこそ志があるってものじゃない。」といって、たくさんの虫の、しかも気持ちの悪いなものを集めては「成長するのを観察するのよ」と、籠に入れて飼っていたのです。 特に、「毛虫が、何かを考えていそうなところってすごく惹かれない?」といって、一日中、髪も動きやすいようまとめてしまって