2015年05月08日13:29 by 東京創元社 牧眞司/フィリップ・K・ディック『ヴァルカンの鉄鎚』(佐藤龍雄訳)解説全文[2015年5月] カテゴリSF 「ディックSF、これぞ最後の一撃!」(2015年5月刊『ヴァルカンの鉄鎚』解説[全文]) 牧 眞司 shinji MAKI 本書は一九六〇年に刊行されたフィリップ・K・ディックの長編Vulcan's Hammerの全訳である。原書初刊はエースのダブルブック(ふたつの作品が背中合わせに製本され両面に表紙絵がついている)で、ジョン・ブラナーのThe Skynappersとのカップリングだった。 タイトルの「ヴァルカン」とは超高性能の巨大コンピュータだ。初代〈ヴァルカン〉の開発は一九七〇年とされ、作中では「第一次核戦争の初期」と説明している。ディックが本作を執筆していた時期は冷戦下で東西両陣営が核兵器開発にしのぎを削っており、この設定には