東京に15年ほど住んでいて、インターネット上で日記を書いていた私のもとに、ある時神戸の方から「あなたが好きそうな町並みがあるから案内したい」という内容のメールが届いた。関西には時々用事があったので何度かのやり取りの後、やがてその方とJR神戸駅で待ち合わせして案内してもらったのは、駅の南口を歩いて阪神高速道路を渡り西へ10分ほど歩いた先にあった稲荷市場、そこから北に歩いた場所にある新開地の商店街や歓楽街、さらにミナエンタウンを通って湊川商店街、ハートフルみなとがわ、湊川市場、東山商店街、マルシン市場へと続く、商店街や市場が迷路状に広がり数百の個人商店が軒を並べる神戸下町の特異な風景だった。 私は大げさではなくその日見たすべてに興奮して毛穴が開いてしまい、遊びに来るだけじゃなくこの場所に住みたいと思い始めた。それから何ヶ月かたった同じ年の秋に妻の妊娠というイベントがあって、どうせこのさき子供が