と言って彼が取り出したのは、経文折りにたたまれた厚手の和紙だった。相当の年月が経っているのか、全体が茶色く黄ばんでいる。 「なんでしょう? 崩した筆文字でビッシリ書かれていますね。お経かなんかですか?」 「いやお経ではなく、神道の祝詞(のりと)。昭和29年の『ゴジラ』第一作で、ゴジラが最初に出現した大戸島の神社の神主が、伝説の海神(ゴジラ)の怒りを鎮めるために、映画で読み上げた実物ですよ。撮影用の小道具だね」 「…………」 もしかして内容がディープすぎて、ピンとこない読者もいるかもしれない。そういう人は、どうかレンタルででも『ゴジラ』第一作を見直して欲しい。ここに書いた通りのシーンがあるはずである。祝詞も、紙の一部だが映画に映っている。まさかこんなにしっかり書かれてあったとは知らなかったが。ともかく、Z氏のコレクションはすべてがこんな調子なのだ。 なかにはこんな貴重なものもあった。氏が「こ