ブックマーク / pulp-literature.hatenablog.com (3)

  • 黒沢清『ニンゲン合格』(1999/日) - 海外文学読書録

    ニンゲン合格 西島秀俊 Amazon ★★★ 吉井豊(西島秀俊)は14歳のとき交通事故に遭って以来10年間昏睡状態だったが、突然病院のベッドで目覚める。彼を出迎えてくれたのは父の友人・藤森(役所広司)だった。10年の間に一家は離散し、吉井家の土地は藤森が借りて釣り堀と産業廃棄物の不法投棄を行っている。父・真一郎(菅田俊)、妹・千鶴(麻生久美子)、母・幸子(りりィ)と別個に会った豊は、やがてポニー牧場を再建する。 浦島太郎状態の豊が世界に自分の存在をねじ込み、ポニー牧場という生きた証を作り、そのすべてを壊して死んでいく。10年間昏睡状態だった豊にとっておそらく夢と現実の境界は曖昧で、だからこそ自分が存在したかどうかが気になるのだろう。一度死んで生き返ってまた死ぬ。そういったプロセスの中には家族との微妙な関係が含まれている。目が覚めたら一家が離散していたというのは過酷な現実だが、それを冷静に受

    黒沢清『ニンゲン合格』(1999/日) - 海外文学読書録
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    KYOROKO 2024/07/29
  • ジョン・ヒューストン『荒馬と女』(1961/米) - 海外文学読書録

    荒馬と女 クラーク・ゲーブル Amazon ★★★ ネバダ州リノ。離婚したばかりのロズリン(マリリン・モンロー)が、カウボーイのゲイ(クラーク・ゲーブル)と自動車修理工のギド(イーライ・ウォラック)と知り合う。ゲイもギドも訳あって独り身だった。ロデオ大会でカウボーイのパース(モンゴメリー・クリフト)をスカウトしたゲイは、みんなで野生の馬を狩りに行く。 脚はアーサー・ミラー。会話やセリフ回しにインテリジェンスが感じられてすごかった。言葉を器用に操るところは坂元裕二を連想させるが、あそこまで洒落臭くない。劇作家らしい抑制されたインテリジェンスで、テレビ屋のような軽薄さは微塵も感じさせないのである。この辺は世界的な劇作家とローカルな脚家の違いだろう。作のセリフ回しは黄金期の文芸映画よりも革新的で、どちらかというと同時代のフランス映画に近い。劇作家が気を出すとこうなるのかと感心した。

    ジョン・ヒューストン『荒馬と女』(1961/米) - 海外文学読書録
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    KYOROKO 2024/06/13
  • 古賀豪『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』(2023/日) - 海外文学読書録

    鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 関俊彦 Amazon ★★★★ 昭和31年。日の政財界のトップに君臨していた龍賀一族の当主が死去する。龍賀一族は製薬会社を経営しており、帝国血液銀行と取引があった。帝国血液銀行に勤める水木(木内秀信)が葬儀の行われる哭倉村に派遣される。そこで謎の男・ゲゲ郎(関俊彦)と出会う。 原作は水木しげる『ゲゲゲの鬼太郎』【Amazon】。 国家による搾取構造を戦争と絡めて表現しているところが良かった。太平洋戦争では国民の多くが国家のために犠牲になった。兵卒は上官から玉砕を命じられ、半ば死ぬことを目的とした無茶な作戦に従事させられた。そして、そのような搾取構造は戦後になっても続いている。戦後政財界のトップに上った連中は戦時中の権力者たちであり、彼らは国民の血税をチューチュー吸って肥え太っている。その構図を哭倉村で露骨に再現しているところが作の肝だろう(血液に注目である)。黒

    古賀豪『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』(2023/日) - 海外文学読書録
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    KYOROKO 2024/05/02
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