おれの父親は広島の人間だった。おれは小さな頃から「反米愛国」を教育されてきた。新左翼的な意味で、だ。それでは、「反核」はどうなのか、というと、そうでもない。吉本隆明信奉者の父は「西側の核ばかりする左翼」を批判しており、どうもその批判のほうが印象深くなってしまった。そしておれは、父親の英才教育によって、なぜか右翼少年に育ってしまった。なんで? というわけで、おれはもとからうっすらと日米関係におけるアメリカが嫌いであり、うっすらと白人嫌いであり、「どうせ白人はアジア人のことなど人間と見ていないのだろう。だから原爆だって平気で落とすし、反省の心なんていっさい持つことはないだろう」と思っている。 そんなおれは映画『オッペンハイマー』を観るのが楽しみでしかたなかった。もう、おれのなかではうえのように定まっているので、どんな描写、あるいは描写の欠落があろうと、そんなのは承知の上だ。言い切ってしまえば、