かつてイギリスの植民地だった香港は今年7月1日、1997年の中国返還から25年の節目を迎えた。おりしもコロナ禍の規制もあり、各国からのビジネスパーソンや観光客が行き交うといったかつての賑わいとは無縁の25周年記念日となってしまった。 返還後の25年間、香港の人口は増え続ける一方、山がちで市街地の面積が狭いという特殊事情もあり、公共交通機関の役割はより重要となった。逆に言えば、返還以前の香港の交通ネットワークは貧弱で、地上ではバスが目抜き通りで渋滞し、地下鉄はラッシュアワーになると東京都心より激しい混雑になるなど、市民の期待を満たす水準とは程遠いものだった。 筆者は1991年から2006年まで香港に在住。その間、香港のユニークな交通機関を利用し、中国本土へも出入りを繰り返していた。返還25周年を機に、1997年以前の香港を取り巻く交通事情はどのようなものだったのか、改めて振り返ってみた。 鉄