喜怒哀楽をこれほどストレートに表現する指揮官は珍しい。プロ野球日本一の座に就いた楽天監督の星野仙一である。胴上げでは涙を流して喜んだが、クライマックスシリーズ(CS)から日本シリーズにかけて、ものすごい形相で怒る姿が目立った。 冷静沈着であることが求められるリーダーなのに、星野はなぜ感情をムキ出しにするのか。それでいて、なぜ勝てるのか。そしてファンにもてはやされるのか。本当は優しい人と思わせる雰囲気があり、それを演じる芝居気も、この66歳の男にはある。 ガムを噛みながら顔をしかめる。ボーンヘッドや逃げ腰の投球には情け容赦ない怒声を浴びせる。時にはコーチを呼び寄せ、「何を教えているのだ」と言わんばかりに叱りつける。だが、快打、快投には大声を上げて拍手を送り、ヒーローを熱い抱擁で迎える。グラウンドでの星野は百面相だ。 対照的な姿として、中日の監督だった頃の落合博満が思い出される。それが義務づけ