【特別寄稿(下)】菅政権のめざすことと、その背景 宇沢弘文・東京大学名誉教授、日本学士院会員 ・農の営みのもつ重い意味 ・日本列島の豊かさを活かす ・農こそ人間的な営み ・社会的共通資本としての農村 ・農村の最適規模を維持する ・コモンズとしての農村を守る 菅首相はTPP参加による「平成の開国」と農業の再生は両立可能だと繰り返し強調している。しかし、そもそも「農の営み」や農村とは、人間と社会にとってどのようなものだろうか。宇沢教授は改めてその意味を強調し、今は「人々の血と汗によって守られきた」日本の農村が消滅する危機的な政策選択をしようとしていることに強く警鐘を鳴らす。 社会的共通資本の視点に立って日本の農業を守る ◆農の営みのもつ重い意味 農の営みは人類の歴史とともに古い。むしろ人類を特徴づけるものとして農の営みが存在するといってもよい。 農業は、自然と直接的な関わりをもちつつ、自然の摂