ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』『罪と罰』の新訳等でおなじみ亀山先生が、『罪と罰』をたんねんに研究した一冊(平凡社新書)。ドストエフスキー本人の半生も含めて、『罪と罰』というテキストをわかりやすく読解していく、たいへん充実した一冊でした。さすがに『罪と罰』未読の方にはすすめられませんが、読みやすい新訳もでていることですし(亀山訳はまだ完結していないのですが)、おもいきって挑戦してみてもよいのではないでしょうか。 読んでいておどろくのは、ドストエフスキー本人のあまりにろくでもない人生である。作家としてはとてつもない才能があるとおもうけれど、ひとりの人間として見たとき、彼はちょっとがっかりするくらいにだめなおっさんである。この人はいったい、どうしたあれだろう。この本で紹介される、ドストエフスキーの数多くのだめエピソードを読みながら、「ああ、これはほんとうにだめだ」とわたしはため息をついて