医師の個人的経験や権威づけに基づく医療から、科学的な試験や調査で得られた「根拠に基づく医療」(EBM:Evidence Based Medicine)へ。医療界はここ20年で大きく変わってきたかに見える。 実際、医療の基本的な考え方や常識は塗り替えられている。 前回は、東京都健康長寿医療センター副院長の桑島巌医師に、高血圧の話題を中心に話をうかがった。単体の病気として高血圧を捉えるのでなく、糖尿病や喫煙などの他の危険因子とともに総合的に血管病を予防する「トータル血管ケア」の重要性が言われてきているという。 こうした医療に対する概念の変化は、EBMが進められていることの表れとも言えるだろう。解明されていなかった点が試験や調査で明らかにされ、それが実際の治療法をも変えているのだ。 しかし、EBMには、危うい点もあるようだ。 薬の効果や安全性を調べる臨床試験の実施者は、基本的には製薬メーカーが担