2012年2月7日のブックマーク (1件)

  • 彼らのアイスランドの城 - 傘をひらいて、空を

    彼とは久しぶりだったので、どうしてたと訊いた。稼いでたと彼はこたえた。相変わらずだねと私は言った。相変わらずじゃないと彼は言った。常に右肩上がり。じゃんじゃん稼いでる。 彼は彼自身の自己紹介を借りれば「稼ぐほうの弁護士」で、稼がないほうというのがどんなものか私は知らないけれども、とにかくよく働いていた。彼の恋人は私の友だちで、彼らは司法試験の受験仲間だった。彼女は彼の言うところの「国家権力の犬」になって、彼と暮らしていた。彼は華やかで少し不安定で、どことなく過剰で、美しいものと力のあるものが好きで、やけに正確な文法を使って滝のように話すのだった。その量と速度が圧倒的なので、何度か会っただけなのにひどく親しい間柄のような気になってしまう。 そんなに稼いでどうするのと訊くと彼は花火のように笑って、アイスランドに城を建てる、とこたえる。私はその文句を気に入って、すてき、と言う。すてき、でもアイス

    彼らのアイスランドの城 - 傘をひらいて、空を
    LethalDose
    LethalDose 2012/02/07
    ほんの少し現実になれば、とおもって話した話を、まったく架空の話だと受け止められるのは少しかなしい。