岸本佐知子『ねにもつタイプ』(ちくま文庫) 著者の前作『気になる部分』について、ワタシは「ためになる、といった実用的な評価軸を外したら、ここ数年読んだ本の中で一番面白かった本かもしれない」と書いた。実際その通りだったのだが、読んでいてただ楽しかっただけではなくて、正直かなり怖いとも思った。この人の書く文章には底の抜けた恐怖がある、と。 そろそろ本書も読んでみようかねと思っていたところに文庫化を知りいちもにもなく買い求めた直後に夜のプロトコルのイベントで伊藤聡さんとトークショーをやることを知り、上京を決意した次第である。 本書を手に取り、読み始めたところでワタシは震えた。冒頭を飾る文章のタイトルからして「ニグのこと」という意味不明さである。 幼いころ、私には何でも話せる無二の親友がいた。 それも三人。名前は、大きいほうから順に、大ニグ、中ニグ、小ニグといった。 ……いきなりガチである。本書は