未曾有の災害をもたらした東日本大震災から3年半。この間、多くの関連書籍が出版されているが、そんな中で異色のノンフィクションが出版された。 本のタイトルは『境界の町で』(岡映里/リトルモア)。大手週刊誌所属とおぼしき女性記者が、原発事故取材時の体験と思いを描いた作品だ。しかも、この中では「原発は人体に影響がない」という記事を掲載した週刊誌で働く苦悩、その編集部の意外な実態も明かされている。 ただ、この作品は原発事故の詳細を追ったルポルタージュや週刊誌の内幕暴露本ではない。 「私という人間は、誰からも必要とされていない、誰も必要としていない。それは震災で浮き彫りになった」 自らの心情を吐露するこんなプロローグからもわかるように、その内容はむしろ、私小説的なノンフィクションといったほうがいいだろう。 未曾有の災害で、多くの人々が家族や友人の安否確認に走る中、「誰からも心配されなかったし、誰からも