大学外科医局に入局して10日目のこと、術後患者さんの造影検査を見学していたとき、医局長がやってきた。 「今年から1人S救命救急センターへ行ってもらいます。希望する人はいませんか」と声がかかった。目の前の患者さんの命を助けることができる救命救急医療を何よりも早く習得したい思いから、「希望します」と即答した私は、7日後、S救命救急センターのユニフォームを着て、看護師さんの指導のもと患者さんの尿量を測定していた。 S救命救急センターは、まだ産声をあげたばかりだった。大学付属病院以外の救命救急は珍しかった当時、重症患者のたらいまわしが発端で、最先端の公的救急施設として鳴り物入りで開設されたのだ。 救命救急センターの医師の仕事は3つに分かれる。まず、昼夜を問わず、救急隊からの連絡を受け、救命救急患者かどうかを判断したり、搬送された患者の蘇生を行いながら、初期診療や緊急手術を行う業務。さらにIC
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