「ガザと政治の質問はなしで」 パリ五輪・イスラエル代表の広報担当者は、ことあるごとに世界から集った記者を牽制しなければならなかった。イスラエルは今大会、ある意味で最も注目されたチームだった。パレスチナのガザ地区で戦闘が続く中、開催された平和の祭典。世間の目は政治問題を語るきっかけとして同チームに集中した。 前回の東京大会からイスラエルは選手団の警備費を大幅に増やし、訓練された自国の武装警備団とともにパリに入った。行く先々で警備は強化され、試合では通常よりも多い1000人の警備員が置かれ、爆発物処理班まで手配された。練習時もピッチをエージェントと私服警官が囲み目を光らせた。1972年のミュンヘン五輪では、選手ら11人が殺害されたテロ事件の前例がある。今大会を守り抜くことは、フランスとイスラエル両国の威信がかかっていた。 こちらは雑誌『Number』の掲載記事です。 NumberWeb有料会員

メダルも大いに期待されたスポーツクライミング女子複合で波紋を呼んだあるシーン。決勝進出選手中で最も背が低い森秋彩が、高く設定された最初のホールドをなかなかつかめなかったのだ。試合以前の問題では、という声もあがったが、森本人はあくまでも毅然と……。

「まず、（活躍するには）しゃべれなダメでしょうね。言葉ができてナンボっていうか。その点で久保選手はほぼネイティブやし、スゴい。あと、いちばんリーガにハマってるのは乾選手かな。彼が（17年に）カンプ・ノウでバルサから2点取った試合は、偶然スタジアムで観てたけど、あそこで日本人が点を決めるなんて想像できひんかったからね。 エイバルはバスク地方の田舎のクラブで、ある意味でスペインっぽくはないところがいいのかも。バスクの人は、一般的なスペイン人に比べると他人のことを考えたり、真面目に働くイメージがあるし。（18年に）ベティスに行ったときは難しかったみたいやけど、（ベティスの本拠地）セビージャはバリバリのスペインって感じの場所やから。ああいうところで混ざってやるのは大変やと思う。サッカーに限らず、いまだにアジア人は舐められているし、人として見下されるようなところがあるからね」 「日本は民放でサッカー

「キックの鬼」と呼ばれた元キックボクサーの沢村忠さんが、3月26日に肺がんのため78歳で亡くなりました。代名詞の“真空飛び膝蹴り”でKOを量産。生涯戦績は232勝（228KO）5敗4分け。キックボクシングを日本に広め、その後のK-1などの打撃系格闘技につながる道を作った沢村さん。その沢村さんの現役時代の“実力”を検証した記事を特別に再公開します。（初掲載：2020年12月30日） 筆者がこのほど上梓した『沢村忠に真空を飛ばせた男／昭和のプロモーター・野口修評伝』（新潮社）は、“キックボクシングを創ったプロモーター”野口修の生涯、興亡、栄枯盛衰を描いたものだが、同時に往年のスーパースター、沢村忠の実力を改めて検証した唯一の本でもある。これまで数多の格闘家が現れたが、沢村忠ほど知名度の割に実力の査定がなされなかった人物も珍しい。 それは本書でも立証したように、241戦にものぼる試合のほとんどが