国立がん研究センター東病院 私のがん診療録 2人に1人ががんを経験するといわれています。がん患者と向き合う医療者は、日常の診療の中で何を思い、感じているのでしょうか。国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)の医師らが、患者さんとのエピソードを語ります。今回は、副院長(研究担当)・消化管内科医長・医薬品開発推進部門長の吉野孝之さんです。 【写真】のみ込んで大腸内を撮影するカプセル内視鏡 大学時代から30年来のつきあいの友がいる。大学時代はルームシェアした、そのぐらい仲が良かった。卒業後は、それぞれ別の道を歩んだ。彼は外科医、当方は内科医。お互いまめに連絡するタイプでもないし、医師として忙しくなるだろうし、でも時を経ても疎遠にならないように、年1回は逢(あ)うようにしていた。 数年前のある日、彼から突然のメール。「大腸がんで肝臓に転移したら何年生きられる?」。「転移は手術できるレベルか」と返す