タグ

ブックマーク / kmiura.hateblo.jp (5)

  • 廃墟の中で - kom’s log

    子供だった男の子のころ町の中にある誰も住んでいない家に入り込んで探検したこと。廃墟の中には空になった一升瓶、布団のない掘りごたつ、死人のような枕の中身、ものすごく汚い金かくし、使い古されてぎざぎざになった箒。畳が上げられてむき出しになった板間、打ち捨てられた神棚、埃が指でなぞれば溝になるほどたまった雑誌の束、かび臭い風呂場、蛇口を開けてもなにもでてこない錆びかけた流し、くたくたになってクモの巣が張っている雪駄、はがれかけたNHKの受信シール、観音開きのテレビ。洋式便所はなぜかかならず横向きに転がっている。町田町蔵の大仏はめったにないのだけど、なぜかアイヌ彫りの熊はどこの廃墟にも鎮座していた。ほとんどかならず。ブラウン管を誰が一番に割れるか、と石をなげて、”パン”と割れる瞬間にぼくらはとびのいて大喜びした。石じゃだめだった。コンクリの塊。でもたぶん私は今廃墟の側にあるのであって、その廃墟の側

    廃墟の中で - kom’s log
    MINi
    MINi 2010/09/21
  • バリ - kom’s log

    シンガポールからしばしの休暇でバリに行った。いろいろ楽しい旅行だったが、印象に残った一人の男について書く。 旅行先で観光ツアーに行くというのはいままでしたことがなかった。観光地にそもそも興味がない。飲んだりったりするほうが重要なのである。とはいえ一歳半の子供がいるので、飲んで回るわけにもいかない。車を運転してもらって観光地を回るんだったらラクだしできそうだな、と思ってはじめてツアーを頼んでみた。泊まっていたホテルのシャトルを運行している気のいいお兄ちゃんがしきりに売り込むので、ツアーをお願いすると決めたら即決だった。値段を聞いたら逆にいくらだったらいいか、というので、ガイドブックを見てそれよりも低めの値段をいったら、そのままだった。 当日ガイドとしてホテルにやってきたのはシャトルのお兄ちゃんではなく、日のチンピラのようなサングラスをかけた若い男だった。中肉中背、浅黒い肌に刈り込んだ髪。

    バリ - kom’s log
  • 年金制度の男女差別について - kom’s log

    某所にある社会保険局にいって彼女の死亡届をした。国民年金をマジメに払っていた人だったので、どのぐらい還付されるのかな、と思っていたのだが、300万円これまで払っていて、遺族に支払われるのは死亡一時金なる12万円である。のこりの288万円はそのまま国のもの。ろくなものではない。あまりに腹がたったので、「詐欺ですね、これ」といったら係の人が絶句してもうすこしエライ人がでてきた。生命保険だって元は補償されますよね、普通、といったら「国がみんなでやっている制度なので、ご理解ください」とのこと。国がみんなで、という言葉に”國體”というおどろおどろしい旧字があたまをかすめた。文句をいうならば、選挙で、とまでいわれた。まあ、そうだろう。 もし私が死んだ場合には、遺族年金なるお金がでて、毎年70万円だかがに支払われるそうである。しかし、私が生きていてが死んだ場合には死亡一時金12万円のみ。男だからど

    年金制度の男女差別について - kom’s log
    MINi
    MINi 2009/06/30
  • 沈黙と拒否 - kom’s log

    神経内科の友達の強力な勧めで大学病院のカウンセラーのところに時々いっている。あの有名なフロイトの長いすがあるわけではないのだが、川を見渡すことのできる気持ちのいい部屋で、すわり心地のいい椅子に座って一時間ほどおしゃべりをする。別れ、離別についての話をしていて、死別と失恋についてどう思うのか、と聴かれた。しばらく考えてから"Silence is better than rejection"。そう応えて、いってみてから自分のいったことがとても的にはまっているようでいろいろ頭がぐるぐると回り始めて黙り込んでしまった。拒否されるよりも沈黙のほうがいい。失恋のつらさは経験したものだったらわかるだろうけれども、そのつらさの極大は話しかけようとしてもそれが拒否されることである。否定されるという経験。でも死別は私が否定されたわけではない。体の一部がなくなったような気にはなるけれど、それは私の存在が否定され

    沈黙と拒否 - kom’s log
    MINi
    MINi 2009/06/30
  • 彼女が死んだ。 - kom’s log

    一ヶ月の間一緒に住んだ。二ヶ月の間、病院で過ごした。短い結婚生活が終わった。 脳幹の梗塞、ということで一度医師団に見放された後に奇跡的に復活したという話はここに書いた。その後の脳の機能回復は私からみるかぎりかなり目覚しく、瞬きを使ってどの曲を聴きたいか、などのコミュニケーションを交わすことができるようになるまで回復した。一方で脳ではなく体の予後が思わしくなかった。初期の激烈な血圧上昇剤投与を停止したことによる副作用と思われる虚血による後発性肝内胆道炎を起こし、おそらくそのことが原因となった肝膿瘍が発症からちょうど2ヵ月後に発見された。細菌の感染も軽微ではあるが、抗生物質で完全に排除することができなかった。脳、肝臓、感染の三つ巴のなかで、治療方針は難航を極め、集中治療室を出ることができずに時間ばかりが過ぎた。この間に私はリハビリについて調べ、特にリハビリの専門家であるバーバラ・ウィルソンの著

    彼女が死んだ。 - kom’s log
    MINi
    MINi 2009/04/07
  • 1