現在、出生前診断といえば事実上ダウン症の診断であるとのこと。市井の産科医院で説明不足のままに何となく検査が行われ、安易な中絶に結びついていると、著者は警鐘を鳴らしている。著者は自らの臨床経験から、自分の外来ではダウン症の出生前診断はしないと宣言している。その著者の実践にもとづいた考察や、臨床遺伝学の先達との対話・親御さんとの対話から、本書は構成されている。 中でも白眉は、ダウン症の子の父親となった医師へのインタビューであると私は思う。語られる内容は決して倫理学の最先端を切り開くような大仰なものではなく、平易で真っ当な淡々とした言葉なのだけれども、それでも胸を打つものがあった。まあ、私も同志ではあり、個人的な思い入れはどうしても入りますね。生まれたその場で判明するダウン症と、じわじわとベールを脱いでくる自閉症とでは、受容の過程は異なるものになるのですが、その点もまた興味深く拝読しました。 著
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