便利で、素晴らしい世の中が、僕の首を締め付けている。窮屈で、息苦しくて、窒息死しそうだ。吐き出した言葉、切り取った写真には光の速さで符号が貼りつけられ、泥酔して野糞のように僅かでも人の道を外れればカメラの大群によってデジタルデータ化され、ネットで買い物をすればその日のうちにモノが飛んでくる。この素晴らしい仕組みを構成する要素は、大概に非人間的で、かつては楽しんでいた不自由を窮屈で退屈なものに、許せていたものを許せないものにしてはいないだろうか。 「どうすれば相手に言葉に届けられるのだろう?」という悩みは、確実に届いてしまう仕組みによって、相手の反応を監視する待機に変わってしまった。いつからだろう?飲み屋の女の子たちがケータイ水没を音信不通の理由に挙げなくなったのは。 結論を急ぐ気持ちは今も昔も等しく変わらないが、性急になりすぎてやしないか。「私のメッセージは届いているのになぜ無視されている