【はじめに】 外は夜の大あらしだ。先週の木曜日の夜、姉が亡くなった。姉は私より5つ年上の59才、私が小学校に入学した年、姉は6年生だった。姉は私から見ると頑固で、やや風変わりだったし、人生観や価値観はかなり異なっていた。姉が病気にならなければ、やや、距離を持った姉弟として、比較的疎遠な関係を続けていたかもしれない。しかし運がよかったのか、悪かったのか、姉は、私が専門として取り組んでいる乳癌を発病した。弟として、主治医として姉の診療に携わり、そして最期を看取った経験は貴重であり、医師としては多くのことを学んだ。家族としては、今、微妙な感覚である。 【闘病歴と治療歴】 2000年6月に姉は右乳癌を自分でみつけた。神田和弘先生にお願いし乳房全摘手術を受けた。ER陽性、PgR陰性、HER2陰性の浸潤性乳管癌グレード2だった。腋窩リンパ節転移は12個陽性であった。この時点で、近い将来再発することは覚