「老化現象」という言葉を耳にすると、以前の私はうんざりして、その話題には触れないように避けていました。 四十代半ばに差しかかり、記憶力や体力に衰えを感じるようになりました。歳とともにこれまで出来ていたことができなくなること、自分の持っている知力や気力が削ぎ落されていくことを自覚するのは、不安を通り越して恐れにも近い感覚です。 同じ頃、老齢の母が年を追うごとに急速に衰えていく様を見るにつけ、想像する自分の行く末を重ね合わせ、不甲斐なく侘しい思いにさせられました。 そんな私が、“老い”を嘆き悲しむものではなく、受け入れて楽しむものと思えるようになったのは、ここ数年のことです。 平均寿命と言われる年数の約三分の二を経過したところで、もう後がないと考えるのか、まだ楽しめる時間が“三分の一も”残っていると捉えるのか ― 要は自分の気持ち次第なのです。 あれができなくなった、これができなくなった、と落