全3回の脚本と、第2回のみ演出を担当した戸田幸宏と申します。 個人的な記憶を書きますが、どうかお許し下さい。 1995年、当時24歳だった私は出版社で働きながら脚本家をめざしていました。 野沢尚、野島伸司、坂元裕二などといったスター脚本家が若くして活躍している時代、 夜を徹して脚本を書いてはコンクールに応募するものの、落選ばかりの日々でした。 思いがけず、私の書いた脚本が青年漫画誌の「原作大賞」を受賞しました。 漫画の世界では、作画を担当する漫画家と分業して、物語のみを脚本形式で書くことを「原作」と称しており、 例えば梶原一騎、小池一夫、武論尊などが、「漫画原作者」です。 私の書いた物語は、「ニュースキャスターが、『ゲイという秘密を暴露する』と脅迫を受け、顔の見えない犯人と、 水面下で闘う」といった内容でした。 当時LGBTという言葉はなく、私にはゲイに関する知識などまったくありません。