アメリカ政治家の「たしなみ」 ドナルド・トランプ大統領はアレクシ・ド・トクヴィルを読んだことがあるのだろうか。トクヴィルといえば、アメリカ政治思想の古典『アメリカのデモクラシー』の著者である。アメリカについて書かれた古今東西の著作のなかでも一、二を争う有名な本だけに、さすがのトランプでも読んだことくらいあるだろう──と思っていろいろ調べたのだが、何にも出てこない。 スピーチにも言及がない(どなたか何かご存知であれば、お知らせ下さい)。ひょっとしたら、トクヴィルについて知らないかもしれないと心配になる(名前くらいは知っているといいのだが)。 なぜ、そんなことを書くかといえば、トクヴィルについての旧著『トクヴィル 平等と不平等の理論家』(講談社選書メチエ)がこのたび、講談社学術文庫の一冊として再刊されたからだ。 文庫化にあたっては、2019年の時点においてトクヴィルの意味を再考する補章を加筆し